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製本ミスかと思いきや? この製本がすごい2014 ―泡坂妻夫「生者と死者」の製本にびっくり

先日、面白い本があることを下記のサイトで知ったので、早速購入しました。

新潮文庫メールアーカイブス 2014年2月20日
「ある日の午後、平積みの文庫から1冊を手に取ったお客さんが、通りがかった書店員を呼び止めた」


泡坂妻夫「生者と死者―酩探偵ヨギ ガンジーの透視術―」 新潮文庫
  ↑ クリックすると、新潮社のサイトにうつり、購入可能です。
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本文が16ページごとに袋とじになっています!!ヽ(゚Д゚;)ノ!!

印刷屋的には、マジ真っ青です。
製本のクラに全部逆に積んだの?? そんなバカな・・・という話ですが、
販売している本はもちろん意識してそうしているのです。

なぜそんなことをするのか?
帯に読み方が紹介されています。

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写真にあるように、
1 はじめに袋とじのまま短編小説として読む
2 袋とじをすべて切り離す  ※ハサミではなく、カッターナイフを使うほうが簡単です
3 全く別の長編小説として読める
という、ものすごい手の込んだ作品になっています。

切り離すと、「元の短編小説が消えてしまう」と謳われていますが、
印刷人はダマせません。
最初に袋とじのノンブルはすべてチェック済みです。
正直に16、32、48、64、80、96・・・と16ページごとに区切られているので、
裂いてしまおうが、元の形でも読むことができます。

長編を読みながら、短編との文章のつながりをチェックすると、なるほどよく考えられています。
著者が執筆する段階で、文庫の1ページの文字数にあわせて書かないと、短編がつながらず、
しかも叙述トリックまで駆使している(ちょっぴりネタバレ・・・ごめんなさい)。
短編小説そのものがおもしろいかは別として、とにかくすごい!!
(そういうのを含めたおもしろさっていう部分でも新鮮でした)
94年に初版が発行されたのですが、おそらくマネする人もまずいないでしょうね。
まさに紙の本ならではですが・・・
印刷屋さん・製本屋さん・書店さん・お客さん・・・知らない人がみたら不良品にしかみえない、
なんとも人騒がせな本でした。
でも、シリーズでもう1冊紙の本ならではの仕掛けを駆使しているものがあるそうで、
早速購入しましたので、ネタになりそうでしたら、またご紹介いたします。

ちなみに、技術的な解説をすると、
これを再現したい場合、
本来ノドの側に袋がくるように面付けするのを、小口側に袋がくるように面付けをします。
印刷は特に問題ありません。
製本ですが、面付に従って折ります。その際、袋とじが裂きやすいようにカットを入れておきます。
バインダー(綴じ機)にセットする際、袋が小口側にくるようにして、無線トジの要領で表紙をくるみます。
天にはしおりがあり(新潮文庫の特徴)、小口の袋はそのままにするため、地側のみの一方断ちをする。
カバー・オビ・スリップをトライオートで挟みこみ完成。

専門用語が並んでいて、ちんぷんかんぷんな方もいらっしゃいますでしょうが、そんな流れとなります。
本書のあとがきを読んではじめて知ったのですが、「フランス装」というのがあるらしいです。

[デジタル大辞林]

【フランス装】
仮綴(と)じ装本の一。綴じただけで裁断せず、縁を折り曲げた紙表紙などをかぶせた装本。ペーパーナイフでページごとに切って読む。本来は、愛書家が自分用に装丁し直すためのもの。フランスとじ。


私的には印刷・製本のことはかなり勉強したと思っていたのですが、
いやぁ、こんな製本方法があり、日本でも行っていたなんて知りませんでした。

自分用の装丁、まさにオンリーワンですから、ぜいたくで読書家は狂喜しそうですが、
本を裂くのって意外と難しいです。
同僚のT橋やH山がやったとしたら、きっと失敗して、
本がどんどん小さくなってしまうのではないかと余計な心配をしてしまいます。

最後に・・・
新潮文庫と岩波文庫って、なんで上がギザギザしているという疑問を抱いたことはありませんか?
新潮文庫は「スピン(しおり)を入れるため」、岩波文庫は「フランス装風の洒落た感じにしたい」ということで、
製本用語としては「天アンカット」といいます。
本当に洒落ているかは好みにもよるでしょうが、実は製本的にはちょっと面倒です。
そんなふうに、小さなこだわりがあるのも紙の本ならではといえるでしょう。
電子書籍とは異なる魅力でもあり、おもしろさともいえるのではないでしょうか?


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by eiwa-p | 2014-04-21 20:00 | 営業部・発
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